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Hiking log vol.13 一山一会(五葉山/赤坂峠登山口)

   

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘

”一山一会”そんな正しい日本語は存在しないが、私の山行はいつも一期一会ならぬ一山一会という言葉が合うような気がする。
その山に樹勢する植物、沢の流れる音、澄み切った空気を感じることは大切な自然との出会い。
そして、その山を、その時間に共有する大切な人達との出会い。

同じ目的を持って山へ入るわけだから、途中出会う方と話が合うのは必然なのかもしれない。
山頂から望める山の答え合わせ、今まで登った山の話、地元の話、カメラ好きな方とカメラ談義で盛り上がるなど、たくさんの方と出会った。
時には一緒に下山したり、温泉で数時間話し込んだり、ここ日本に数万とある山の一つでたまたま居合わせた奇跡的な出会いは大切にしていきたいと思った。




時期は2015年11月下旬。
岩手県は大船渡市にある「五葉山」に仲間と一緒に1泊2日の行程で登山を楽しんできた。
雪が降り積もったばかりの五葉山はそんな”一山一会”を強く感じた登山になるとは、登り始めまでは想像もできなかった。


前日、登山が楽しみで寝付けなかった私は深夜に仙台を出発。
何度経験しても登山は、小学生の遠足の様にワクワクしてしまう。
深夜に出発をしたために朝方には大船渡入りしてしまい、待ち合わせの11時までかなり時間があるため、大船渡をドライブすることにした。
まずは、太平洋側まで行って朝日を拝もうと思い車を海岸線へ向けた。

碁石海岸キャンプ場の隣にある碁石海岸インフォメーション奥の展望台から朝日をじっと待った。
太平洋 碁石海岸 大船渡 朝日 日の出
若干雲がかかっているが、日の光を体に浴びて目が覚めると同時に、これからの登山が無事に終了することを祈る。




五葉山は岩手県大船渡市、釜石市、住田町にまたがる岩手県沿岸最高峰の山。
標高は1351mだが、花の百名山に選ばれるほど、ツツジやシャクナゲの花がそれは見事に咲き誇るとのこと。


今回は大船渡出身の友人に誘われて仲間たち総勢5人で登った。
普段お一人様登山ばかりしている自分がこうやって友人と一緒に登山をすることは珍しいことだ。
けして一人が好きというわけではないが、今まで山を登る友達もいなかったので、ずっと一人が当たり前で好きな時に、好きなペースで自由に登ってきた。

こうやって複数人で登ると話は尽きることなく、最初から最後まで楽しかった。

当然だが、友人たちは皆んな登山経験が違う。
始めた時期、登った山、登るペース、好きな風景、そんな各々の経験を擦り合わせて登ると新しい発見がある。

ある友達は登山を始めたばかりだけど、料理が上手く、体力もあってグイグイ引っ張って行ってくれる。
ある友達は経験豊富で周辺の山や植物に詳しくて、色々と解説してくれるから山の知識を身につけることができた。
ある友達はパッキングが上手く、細引きを使って寝床のスペースをカスタマイズしたりとアイディアが素晴らしい。
ある友達は紅一点。山登りを始めたばかりなのに、10kg近い荷物を背負う体力と皆んなを思いやってくれる優しさがある。

普段も素晴らしい友人達だが、山という厳しい環境に身を置くと、さらにその優しさや個性を感じることができた。


そんな登山の起点となるのは、赤坂峠の途中にある「赤坂峠登山口」
この日は天気は良好なものの、風がとにかく強かった。
駐車場では車から降りたくないと思うほどの風で帽子はすぐに飛ばされる。
しかし、入山直後は林の中を進むことにより風の影響はほとんど受けることはなかったため、とても快適なハイキングだった。
今思い返しても、風が強いと感じたのは駐車場と最高地点三角岩だけであったと思う。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
左:登山開始食後の林間の道を進む。降雪したばかりだが、歩くにはまったく問題ない量の雪が登山道に色を添えている。
右:長い上りの林間を抜けた先の開けた岩場での小休憩。



体力のある友達が先頭を引っ張ってくれるが、10kgオーバーの荷物を背負っているとは思えないほどの早いペースだと自分は感じた。
正直この体力の差はちょっと悔しかったな。山の景色を見ながらも、自分との違いを探していた。
バックパックのポケットの使い方、足の運び方、ストックの使い方、ちょっとした違いが参考になる。



赤坂峠登山口の高度は712m。
雪は地面にだけ積もっていたが、高度を上げるに連れて雪の積もり方や量に変化が現れてくる。
7合目付近からだろうか、木々や植物の葉にも雪が積もり、足元の積雪量は増えてはきたが卸したてのトレランシューズの内部に水が染み込むことはなかった。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
左:終始この二人が先頭に立ち登山をリードしてくれた。黒を基調とした彼らのウェアやバックパックは白の山にとても映えた。
右:登山道は背丈以上の木々に囲まれており眺望は良いとは言えないものの、登山道途中には大船渡の海まで眺めることができる場所がある。




畳石の手前だっただろうか、目の前に雪化粧した黒岩(標高1320m)が視界に飛び込んだ。
五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘

休憩に最適な畳石では、続々と下山する登山者とすれ違う。
話を伺うと、山小屋に人はもうほとんどいなかったとの事で、これはもしや貸切になるのか?初めて山小屋泊なら貸切の方が何かと迷惑をかけなくて済むのでありがたいと、「この時は」思ってしまった。


登山経験はあるものの、やはり普段とは違って友達のペースに無理に付いて行こうとしてしまい最後は疲れてしまった。
そろそろ少し休憩したいなと思った頃に、ようやく今日の目的地「石楠花荘(しゃくなげそう)」に到着した。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘

やっと到着したという気持ちよりも、まずはなんて美しい小屋なんだと思う感情が先に湧いた。
雪により真っ白になった背景に赤茶色の屋根がくっきりと浮かび上がり、「しゃくなげ荘」と掲げられた看板がワンポイントになり全体を引き締めている。
写真好きな私にとっては最高な構図だったので露出を変えながら数枚シャッターを切った。
そして想像していたよりも大きい山小屋の姿は、登山者に安心感を与えてくれる。

今夜はここに泊まるのか…期待が高まる。

木製の階段を数段上り入り口に入ると、中はとても広く、別世界のような暖かさだった。
建設からかなりの年数は経過しているとの話だが、そんな事はまったく感じさせないほど手入れがされており、今日まで管理人や地元の登山者が大切にしてきたかがわかる。
山小屋の中心にはどっしりとした薪ストーブが存在感を放つ。
その周囲を小上がりの様になっており、さらにハシゴを登り2階にも同じくらいのスペースがあるので、20人程度なら快適に過ごせる空間だ。

自分たちが到着した頃には管理人が薪ストーブで小屋の温度を保っていてくれた。
管理人の話では、今日は地元の登山者が年の最後に集う会が行われて、大変賑やかになるとのこと。
迷惑をかけるが了承してほしいとのことだった。
貸切ではなかったかと、少し残念がってしまったが、後に今日を登山日にした事が大正解であることを知ることになる。


自分達は入り口付近の少し奥まった場所に今夜の寝床を準備した。
着替えて、マットを敷き、友達は細引きで空間をカスタマイズしていく。
荷物を解き終える頃から続々と登山者が入ってくる。
年齢は自分より二周りほど上のベテランハイカーが多く、あれよあれよと小屋は満員になった。
この時は、こんなに見ず知らずの大勢と壁もない場所で眠ることができるのだろうかというのが一番の不安だった。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘

外は氷点下だが、この薪ストーブによって小屋内部は20度以上を保っていた。薪は地下の保管庫に大量に蓄えられているが、その薪は登山者が夏の間に運んでくれたからこそ今こうして凍えずに過ごせると思うと感謝の気持ちでいっぱいだ。


自分たちはまだ3時過ぎだったが、持参したビールとツマミで飲み始めた。
頑張って重い荷物を運んできた達成感と、無事に小屋に到着した安堵が酒を何倍も旨くさせてくれる。

夜も近づき、友達が夕飯の「きりたんぽ鍋」を作ってくれた。
人数分の材料や鍋を運んできてくれたご飯の味は優しく、最高に美味しい。本当に心から感謝して食事を食べたのは久しぶりかもしれなかった。


山小屋はまるで別次元のようにゆっくりと時が流れる。
あれ?まだ5時?…まだ7時?…そんな会話を何度かした気がする。

美味しい鍋を食べ終えた頃から、周りの登山者と話をするようになった。
もちろん酒の力はあったかもしれないが、それ以上に同じ山好きだから共通の話題に事欠かなかった。
合コンやお見合いのように、趣味はなんですか?お仕事は?そんな事聞く必要なんてない。
「五葉山いい山ですね!」自然と発せられた本音は相手の心の扉を開かせる。
二言目には「だろ?酒あるのか?」
と、酒を酌み交わすまでのスピードは光のように早い。

私が「仙台から来ました」というと、なぜか驚かれた。
大船渡近辺の方々からすると仙台は遠いようで、雪が降った五葉山まで遥々登りに来た事が珍しかったのかもしれない。

仲間5人で来たはずなのに、散り散りになって飲んでいた光景がなんとも不思議であったが、みんな楽しそうで良かった。
気づくと山小屋は40人ほどの登山者ですし詰め状態だったが苦は感じなかった。

私と友達が持参したサンダルが勝手に何度も使われていたが、今日は怒る気にもなれない。
むしろ使ってくれてありがとう、そう思うようになってしまった。

友達が例えてくれた、「親戚の家に遊びに来たような感覚」この一夜を一言で表すならばこの言葉がピッタリ。
みんな優しい方ばかりで、私たちが食べ物やお酒がなくなっていないか心配をしてくれた。
内窓と外窓の間にずらりと並べられたお酒は冷えていて、惜しげもなく私に分けてくれた。

正直、酒は登山をする上で重い荷物だ。
苦労して運んだ酒を、初対面の若造に飲ませてくれた事がどれだけ凄いことなのか、山登りをする人ならばわかってくれると思う。
その時は調子に乗って遠慮なく飲んでしまったが、いつかお返しをしなくてはと思っている。
宮城のとびきり美味い日本酒でも持って行こう。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
左:友達お手製の「きりたんぽ鍋」は山でも材料に手抜きがなく肉も野菜もたっぷりで最高に美味しかった。
右上:窓辺に並べられたビール。これは友達のだが、ビールを1本しか持ってこなかった自分に飲ませてくれた。
右下:この日は新聞記者も来ており、その方のカメラストラップ。ニコン好きなら憧れるプロフェッショナルの証である非売品のストラップ。



宴も日付が変わる前にはお開きになり、それぞれ眠りについた。
こんなに大勢の初対面と一緒に寝たのは他に記憶にないが、安心して安眠していた……と友達に聞いた。



翌朝、日の出を見るために私たちは早起きをして小屋を出た。
小屋からさらに登ると間もなくして五葉山山頂に着くが、高低差がない平地をずっと歩いていると突然山頂の標識が現れるので、山頂に着いたという感じはしなかった。
山頂を過ぎてさらに先に進むと、樹林帯に入り、その先に最高地点「三角岩」に着く。
ここで日の出を拝もうとしたが、生憎雲が多く地平線を覆い隠していた。
強い風が吹いてどんどん雲を流してしたが、その雲は一向に無くなることはなく、諦めて山小屋へ戻ることになった。
僅かに日の出の橙色を垣間見ることができたが、それよりも、こうして仲間と一緒に山の最高峰にいることができただけで幸せだった。


五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
左:日の出を待つ仲間と三角岩。三角岩で風を遮りながらじっと雲が途切れるのを待った。
右:五葉山山頂。



山小屋に戻ってからは、友達が米を湧き水で炊き、そのご飯でカレーを食べた。
山のカレーは美味いが、今回のカレーは別格の美味しさで感度した。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
左:五葉山の湧き水で炊いたご飯は炊く加減も見事で美味しく、多いかと思ったがあっという間に完食した。
右:山小屋内の注意書き。”小屋は大切に”その通りに小屋の内部は綺麗に保たれていた。



私たちがカレーを食べ終える頃に、ベテランの登山者達は一人、一人と山小屋を後にする。
昨晩のお礼を伝えながら、その姿を見送った。
寝床の後片付けを終え、管理人さんと談笑して、昨夜の余韻を楽しみながら出発の準備をした。
夢の国から帰りたくないように、この「しゃくなげ荘」も夢と現実の狭間のような空間だった。
ちょっと口が悪いけど優しいミッキーマウスや、酒にのまれてしまったドナルドダックはそこには居たような気がする。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘
最後に皆んなで記念撮影をしてしゃくなげ荘を後にした。


荷物が軽くなったお陰で、登り以上に軽快に登山道を下ることができた。
この日も何名かの登山者とすれ違ったが、雪が降ってもこれだけ多くの方が登る姿を見ると、この山がいかに地元の方々に愛されているのかがわかる。

五葉山 登山 しゃくなげ荘 石楠花荘

下山しながらも、話題は昨夜の出来事が主役だった。
詳しくはここでは語らないけれど、山小屋で過ごした濃密な時間は私の登山の歴史に深く刻み込まれ、しっかりとアーカイブされた。
この登山から数ヶ月、何度この山小屋の話を仲間内でしただろうか。
内容は同じ話なのに、100回聞いても腹が痛くなるほど可笑しくなるだろう。


一山一会、たくさんの登山者との出会いは自分をさらに成長させてくれた。
仲間の優しさと、登山スタイルは見習うべき事がとても多く本当に勉強になった。
多くの方々と時間を共有することにより、一人では見ることができなかった山の姿を望めた気がする。

五葉山、本当にいい山、いい人でした。






今回の登山ルート

Hiking log vol.13 一山一会(五葉山/赤坂峠登山口)

Hiking log vol.13 一山一会(五葉山/赤坂峠登山口)

登山日 2015年11月28日
登山口 赤坂峠登山口
登山ルート 赤坂登山口〜畳岩〜石楠花荘(1泊)〜山頂〜三角岩

登山開始  午前11時40分
畳石    午前12時20分
石楠花荘着 午後 1時25分(一泊)
石楠花荘発 午前 5時50分
山頂    午前 6時 5分
三角岩   午前 6時20分
石楠花荘着 午前 6時55分(朝食)
石楠花荘発 午前 9時15分
赤坂登山口 午前10時50分(下山)

合計時間  23時間10分
総距離   




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